苦木(ニガキ)
2010年 07月 28日
苦木は、ニガキ科ニガキ属の落葉高木で、東アジアの温帯から熱帯に分布する植物である。兵庫県が発行した『兵庫県の樹木誌』によると、「北海道から沖縄の低地の林内に見られ、県下では山地にやや稀に分布している」とある。
我が家の周辺では、全く見かけない木であるが、何故か我が家に生えている。故郷を離れて四十数年、他郷を転々としている間に、鳥に運ばれてきて、我が屋敷の一角で生息することになったのだろう。
ただ、この木、運の良いことに、崩れかかった古い家を潰して、新しく家を造るために、屋敷を更地化したのだけれど、たまたま更地化の範囲外であったので、切られずに残ってしまった。しかし、この木は、美しい花を咲かせるわけでもなく、葉が綺麗なわけでもなく、美味しい果実を実らせるわけでもないのに、新築なった我が家の正面辺りにデンと突っ立っているのが、何となく気にかかる。
〈この機、何の木?〉と調べてみると、どうやら苦木らしいということが分かった。枝や葉は噛むと非常に苦い。
【苦木のプロフィール】
樹高は、10~15メートル。〈写真のものは、一度2.5メートル辺りで切っている〉
葉は、枝に互生し、奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)で、長さは15~25センチ。小葉は、7~13枚が対生し、形は広披針形で、先端は尖る。小葉の長さは、3~7センチで、縁は鋭鋸歯である。
花は、葉腋から花序軸を出し、集散花序の黄緑色の小花を多数つける。目立たない花である。花期は4~5月。
果実は、楕円形の核果で、緑藍色に熟す。
樹皮は、暗褐色で、滑らか。老木になると、縦に裂ける。
名は、幹も枝も葉もすべての部分に強い苦味があるところから、付けられた。苦いのは、クワッシン、ニガキラクトンなどの苦味成分が含まれているからである。
樹皮を乾燥させたものは、生薬の苦木(ニガキ・クボク)で、健胃剤として利用される。また、樹皮や葉を乾燥させたものを煮出し、その汁を天然の殺虫剤として、農作物や家畜へ散布するという利用方法もあるようである。
ということで、一度は、目障りだから伐採しようかと思ったのだが、苦木の効用のあらたかさに着目し、寸を縮めるだけにして置いている。
草刈機村方々で弾けをり 和樽