ツマグロヒョウモン(褄黒豹紋)という蝶
2011年 09月 23日
ツマグロヒョウモンは、元来、南方系の温暖な気候を好む蝶であるが、永年の間に徐々に低温に適応して、次第に北へ生息圏を広げて来て、日本では東海地方から南西諸島がその生息域と考えられてきた。しかし、環境省が2009年に行った調査では、以前はほとんど発見されなかった東京や神奈川、埼玉で大量に見つかり、北関東にも入り込んでいることが確認された。
暖かいところが好きなツマグロヒョウモンの北上を可能にしているのは、温暖化で冬場の気温上昇、越冬しやすくなったことや、幼虫がパンジーなどスミレ類を好物としているので、園芸植物にまぎれて広がったとも言われている。
毎日のように我が家のニラ畑にやってくるのはオスばかりであったが、今日ようやくメスのツマグロヒョウモンが姿を現した。オスは、後ろ翅の黒い縁取りが特徴であるが、メスはそれに加えて前翅の両端の部分が紫がかった黒色で、白いたすき掛けがなかなか粋である。
このメスの翅のデザインは、実は、日本では奄美大島以南にしか生息していないといわれる暖地系のチョウ、カバマダラのデザインを真似た(「擬態」という)ものらしい。カバマダラというチョウは、幼虫がトウワタという有毒植物を食べて育つので、成虫のチョウになっても体内にはその毒が残っている。それを知っている小鳥たちは、このチョウを襲うことはないというので、それに肖(あやか)りたいとカバマダラのデザインンを拝借したというわけである。
しかしながら,ツマグロヒョウモンのメスがデザインを拝借したカバマダラは、今でも奄美大島以南の温暖地を動こうとはしない。
一方、ツマグロヒョウモンだけが生息圏を北へ北へと広げているのである。新天地では、バマダラ似は通用しない。
だから、将来、ツマグロヒョウモンのメスの翅のデザインは、ひょっとすると全く違ったものになるかもしれない。
曼珠沙華黄金の波を取り囲む 和樽